2026年4月22日水曜日

【館長ブログ】橋本大輔展 長い人生の旅は始まったばかりです

 2026年1月10日~3月29日まで、独立美術協会 会員の橋本大輔先生の展覧会「橋本大輔展 記憶の場所」を開催しました。

『標』2015年


先生は、19歳の学生のときに独立展に入選し、その後も数々の受賞を重ね、24歳で日動画廊未来展グランプリ、25歳で昭和会優秀賞を受賞されました。この当時のモチーフは廃墟でした。朽ちた屋根から漏れる光と影、一木の輝く葉の色は、かつての繁栄と衰退、そして再生への萌芽を表しているようにも感じ、来館者の中には感激し涙を浮かべる方もいました。作品を展示する際、廃墟の作品にどんな反応があるかと興味がありましたが、多くの方は、橋本先生の迫力ある構図と画力に引き寄せられ「作品の素晴らしさに感動しました」という言葉をたくさんいただきました。

ギャラリートークにはたくさんの方がご来館くださいました。作品に取り組む先生の考え方、構図や遠近について専門的なお話がありました。真摯に取り組む先生の姿勢が垣間見え、作品をより身近に感じていただけたのではないかと思います。

ギャラリートーク

チバテレビのTV取材では、先生が出演され、展覧会の様子を5分間程放映していただきました。放送を見たというお客様もいらっしゃり、メディアの影響力の大きさを毎回感じます。

チバテレビの撮影

近隣小学校の支援学級の鑑賞授業もありました。アートコミュニケータのご協力をいただき、大きな作品の前で子どもの目線でいろいろ発見し、お話をしてもらいました。子どもたちが見えたものにストーリーを作り、感想をきちんと表現できるところに毎回驚かされます。

鑑賞授業

展覧会の期間中、橋本先生から近況をいろいろお伺いすることができました。お話を伺う中で、風景作家にとり、「強く描きたいと思う場所」に出会うことが必要で、先生にとっては廃墟を超える場所にまだ出会っていないのではないか、それを探す旅が必要ではないか、と感じました。私自身、長い人生を過ごしてまいりましたが、振り返ると経験のすべてが糧になっています。先生にもこれからたくさんの経験を積み、新たなモチーフと出会い、画家としてさらに飛躍していくことを期待しています。橋本先生の長い人生の旅は、まだまだ始まったばかりです。

2026年1月29日木曜日

【館長ブログ】西房浩二展 作品は作家の生き方

 2025910日から1221日まで、日展・光風会でご活躍の西房浩二先生の展覧会を開催しました。先生は石川県能登町の出身で、ご実家のお寺の住職という経歴を持つ作家です。作品は、石川県七尾美術館・能美市・北陸大学からもお借りし、約40点余を展示できました。先生は、自分の展覧会にはお客様がいらっしゃらないのではと心配されていましたが、1900名を超えるたくさんのお客様をお迎えすることができました。

『Albarracin』

4か月の会期中には、いろいろなことがありました。

前期・後期と2回ギャラリートークを開催しました。前期では画家の木原和敏先生がご来館され、二人の画家目線のトークがありました。どちらの先生のギャラリートークなのかと感じる場面もありましたが、とても楽しい時間となりました。後期では、画家を目指したエピソードなど興味深いお話を伺うことができました。

 
『ギャラリートーク』

今回も近隣小学校169名の鑑賞授業がありました。お忙しい中、西房先生も駆けつけてくださり、先生を見た子どもたちは歓声をあげていました。先生からは「これから好きなものや興味のあることをたくさん見つけていってください」とお話しがありました。子どもたちにとって印象に残る授業となったのではないかと思います。

 

『鑑賞授業』

メディアからの取材もたくさんありました。チバテレビのニュース番組では先生自らご自身や作品についてお話しされました。美術月刊誌の企画で、岡本太郎美術館 土方明司館長との対談を当館で実施しました。流山市と能登町が姉妹都市ということが縁で、広報ながれやまの取材も受けられました。

また当館に映画撮影のオファーがあり、先生の作品の前で撮影が行われました。当館開設9周年コンサートではカンツォーネが披露され、ヨーロッパを描いた作品の雰囲気と相まって素敵な時間を過ごすことができました。

 
『newsチバ』より

西房先生も度々ご来館され、お客様と積極的にお話しをしてくださいました。多くのお客様から「作品からとても静かな印象を受けます」と感想をいただきました。先生とお会いした方は、お人柄からも同じ印象を受けますとおっしゃっていました。作品は、作家の人生を描き残すものと考えると、先生の謙虚で真摯な生き方が鑑賞者に届き、あらためて絵画の魅力をお伝えすることができたのではないかと感じました。

 

本展覧会では、能登町、先生が在住されている能美市、流山市の各市教育委員会のご後援も賜りました。能美市からは市のパンフレット等をご提供いただき、お客様に能美市をご紹介することができました。能登町のご実家は地震の震源地に近く、震災を心配される方から温かいお言葉もたくさん頂戴しました。誠にありがとうございました。

展覧会開催にあたり、西房先生をはじめ、ご協力いただきました関係各所の皆様にあらためて感謝申し上げます。

2025年9月28日日曜日

【館長ブログ】第4回アートの卵展 私の街の若きアーティストたち 作品のイメージはスマホから

 第4回アートの卵展が8月5日から31日まで開催されました。

本年度は市内中学校美術クラブの皆さんだけが参加する展覧会から、門戸をひろげ市内中学校の卒業生まで出品できる展覧会に生まれ変わりました。

市内9校の中学生の作品57点、高校生の作品10点、先生の作品6点を含め73点の作品を展示することができました。アートの卵賞、市長賞、教育長賞、森の美術館賞、審査員特別賞、奨励賞4点の作品が選ばれました。

高校生の作品は、対象の捉え方と描き方に成長を感じました。また、森の美術館賞を受賞した作品は、出品した生徒さんによると「空間に浮かぶ物体と荒廃した地平の接触により何かが生まれる」という意味があるとのことで驚かされました。


出品者との話の中で作品の素材をスマホで検索するということを聞き、時代を感じました。作品はその人間の個性が形になるものだと思いますが、自らの感性で創造するのではなく、興味のあるものを検索し参考にするということでした。巷にあふれる情報の中で、多くのことを実体験することは困難かもしれませんが、できれば対象を描く作品は、その場の空気感、物の存在感、触感、においなどを実際に感じとってほしいものです。

夏休み期間中ということもあり、保護者の皆さまもたくさんご来館されました。親子で作品をゆっくりご覧になることは少ないと思いますので、良い機会になったのではないかと思います。この展覧会が夏休みの親子の思い出になれば幸いです。


2025年8月28日木曜日

【館長ブログ】国展100回記念展を開催

 2年前、流山在住の国画会会員 村田純江先生より、2026年国展が100回記念展を迎えるにあたり、絵画・彫刻・工芸・版画・写真の五部門合同の企画展を全国で開催するという事業についてのお話がありました。国展は毎年拝見し、当館にも会員の先生方の作品を所蔵していることもあり、その記念すべき展覧会開催を当館でお引き受けすることになりました。



地域の美術館として千葉県内の会員の作品を中心とした展覧会となりましたが、他の地域でご活躍している先生方の作品もお願いできるということでしたので、安達博文先生、前田昌彦先生、中村宗男先生、佐々木豊先生、稲垣考二先生、大内田敬先生、横江逸美先生、成田淑恵先生に出品をお願いしました。先生方からご快諾いただき、大阪、金沢、富山、名古屋、横浜などから作品が届いたときは大変感激しました。


展覧会初日には、ギャラリートークとオープニングパーティーが開かれ、当館で出品をお願いした先生全員がいらっしゃいました。多くのお客様の前でそれぞれの作品についてお話をしていただき素晴らしいギャラリートークとなりました。



当館では工芸と彫刻の作品を展示することが今回初めてでした。特に彫刻は展示室だけではなく屋外展示もあり、芝生や竹林を前に佇む作品は大好評で「自然と溶けこんで素晴らしいですね」というお褒めの言葉をたくさんいただきました。一つの会場で様々な種類の作品を観ることができ、小さな美術館ですが充実した展示になったのではないかと思います。



参加・協力いただきました国画会と会員の皆様に感謝申し上げます。そして国画会の益々の発展をお祈り申し上げます。

2025年7月16日水曜日

【館長ブログ】田中里奈 木版画展 版画の新たな魅力を発信できたのか

 2025年4月5日から6月28日まで、「田中里奈木版画展~イマ、版と共に…~を開催しました。田中先生は東光会、日展の会員として数々の賞を受賞し、今注目されている木版画家です。



先生の作品を初めて拝見したとき、その大きなサイズと構図に驚かされ、すぐに所蔵することにしました。その後、東光会展、日展で作品を拝見するようになり、100号の大作や絵の力強さに魅力を感じ、版画のイメージを大きく変える先生の展覧会を当館で開催したいと思いました。

『人生設計』S80 2024年


展覧会開催に際し、コンセプトを「版画の枠を超え、驚きと感動を提案する」ということにしました。具体的にどうするかを考える中で、思い切って展示室の壁の色を変えること、作品は額装しないことの2点を決めました。

壁の色は赤になり最初は違和感を感じましたが、展示すると作品が際立ち、ご覧になった多くの方から「面白い展示」とお褒めの言葉をいただきました。また額装しないことで、ご覧になった方の思いが額の中にとどまることなく広がっていくように感じました。先生の大作を前期・後期に分け24点展示しましたが、木版画の作品というより現代アートのようだというお客様もいらっしゃいました。

さまざまなチャレンジが、版画の新たな魅力を引き出せたのではないかと思います。


本展覧会は、チバテレビの展覧会紹介、読売新聞の夕刊CityLifeに4週間連続掲載、東京新聞の文化欄での紹介など、多くのメディアにも取り上げられました。田中先生と木版画が多くの人に知られる機会になったことは大変嬉しいことでした。


最後に、全国にあふれるインバウンドのお客様の一人がとうとう当館にも訪ねてきました。アメリカのコロラド州からいらっしゃった女性の画学生でした。スマートフォンの翻訳機能を使用してお話をしたのですが、田中先生の作品に大変感動したとのことでしたので、ぜひアメリカのお友達にも知らせてくださいとお願いしました。日本にとどまらず世界へ作品の魅力が伝わっていったら素晴らしいことだと思います。

東光会写生会

期間中、版画のワークショップや東光会の写生会などのイベントも開催され、田中先生のお力添えをいただきました。田中先生のこれからのご活躍を楽しみにしています。