2025年7月16日水曜日

【館長ブログ】田中里奈 木版画展 版画の新たな魅力を発信できたのか

 2025年4月5日から6月28日まで、「田中里奈木版画展~イマ、版と共に…~を開催しました。田中先生は東光会、日展の会員として数々の賞を受賞し、今注目されている木版画家です。



先生の作品を初めて拝見したとき、その大きなサイズと構図に驚かされ、すぐに所蔵することにしました。その後、東光会展、日展で作品を拝見するようになり、100号の大作や絵の力強さに魅力を感じ、版画のイメージを大きく変える先生の展覧会を当館で開催したいと思いました。

『人生設計』S80 2024年


展覧会開催に際し、コンセプトを「版画の枠を超え、驚きと感動を提案する」ということにしました。具体的にどうするかを考える中で、思い切って展示室の壁の色を変えること、作品は額装しないことの2点を決めました。

壁の色は赤になり最初は違和感を感じましたが、展示すると作品が際立ち、ご覧になった多くの方から「面白い展示」とお褒めの言葉をいただきました。また額装しないことで、ご覧になった方の思いが額の中にとどまることなく広がっていくように感じました。先生の大作を前期・後期に分け24点展示しましたが、木版画の作品というより現代アートのようだというお客様もいらっしゃいました。

さまざまなチャレンジが、版画の新たな魅力を引き出せたのではないかと思います。


本展覧会は、チバテレビの展覧会紹介、読売新聞の夕刊CityLifeに4週間連続掲載、東京新聞の文化欄での紹介など、多くのメディアにも取り上げられました。田中先生と木版画が多くの人に知られる機会になったことは大変嬉しいことでした。


最後に、全国にあふれるインバウンドのお客様の一人がとうとう当館にも訪ねてきました。アメリカのコロラド州からいらっしゃった女性の画学生でした。スマートフォンの翻訳機能を使用してお話をしたのですが、田中先生の作品に大変感動したとのことでしたので、ぜひアメリカのお友達にも知らせてくださいとお願いしました。日本にとどまらず世界へ作品の魅力が伝わっていったら素晴らしいことだと思います。

東光会写生会

期間中、版画のワークショップや東光会の写生会などのイベントも開催され、田中先生のお力添えをいただきました。田中先生のこれからのご活躍を楽しみにしています。

2025年4月16日水曜日

【館長ブログ】原 太一展 ギアス氏とジョンに魅了された展覧会

 原 太一展 A Scrapbook of Journeys~ギアス氏と相棒の旅~を2025年1月10日から3月30日まで開催しました。原先生の作品は、擬人化されたうさぎのギアス氏と相棒のジョンが、あるときは世界の街角に、またあるときは空想の世界や名画の中に登場し、時空の中を自由に旅する作品です。

『新たな出発』2020年

多くのお客様がギアス氏とジョンを探しながらご鑑賞されました。「楽しい作品ですね。」とか、初めて作品にふれた方からも「すっかりファンになりました。」といった感想をいただきました。絵画は私たちの感情に訴えかける力があると常々思っていましたが、あるお客様から「作品を観て、本当に心が温かくなりました。」と言われたときは、改めて作品の持つ素晴らしさや魅力を教えられた想いで、大変感動しました。

今回の展覧会は、今までにない多くの来館者数を記録し、遠くは四国や広島から熱心なファンの方が、また先生の地元松戸から絵画教室の生徒さんたちが、老若男女問わずいらっしゃったことも印象的です。


千葉テレビの「newsチバ」という番組で、原展の特集が放送されました。原先生が出演され、自ら作品の説明をされました。多くの方にご視聴いただき、テレビを見た方がご来館くださいました。


ギャラリートークでは、100人を超えるお客様が集まり、立ち見の方もいらっしゃいました。お父様で画家の原大介先生にもご挨拶をいただきました。原先生は資料を使いながら、画家としての考えを丁寧にお話され、皆さん満足して帰られました。


今回も近隣の中学校の1年生6クラスの鑑賞授業を,アートコミュニケータのご協力のもと実施することができました。原作品の表現に、生徒の皆さんの想像もふくらみ、作品からストーリーを作りだしていました。また美術クラブの皆さんの鑑賞日は、原先生のご来館日と重なり、直接お話を聞く機会となりました。先生にフレンドリーに接していただき、思い出深い時間になったのではないかと思います。他にも小学校の支援学級の子どもたちにもご鑑賞いただきました。



最後に白日会展にて、原先生の作品『アート・セッション』が文部科学大臣賞を受賞するという嬉しいニュースが飛び込みました。会期中の受賞は、先生が大きく羽ばたいていく瞬間を目の当たりにしているようで、大変嬉しく思いました。

『アート・セッション』2025年

これからもギアス氏とジョン、そして原先生の旅をずっと応援していきたいと思います。ありがとうございました。

2025年3月20日木曜日

【館長ブログ】平澤篤 回顧展 子どもたちの心に残ってほしい展覧会

 『平澤篤 回顧展 Time piles up in the soul~時は魂の中に積もる~』は、2024年10月~12月に開催しました。平澤篤先生の作品は、白日会展で拝見していました。写実的表現の中に、重厚で幻想的な雰囲気をもつ、心惹かれる作品です。

『眠りの森』

ある日、GALLERY NAOさんを訪ねたとき、平澤先生の白日会展の作品が展示されていました。オーナーのお話の中で、「今回は平澤先生の追悼展です。」と伺い、先生がお亡くなりになったことを初めて知り驚きました。後日、オーナーが当館にご来館されたとき、美術館開設以来、いつか平澤篤展を開催したいと思っていたというお話をさせていただきましたところ、早々に奥様に連絡を取っていただき、展覧会開催の運びとなりました。あの時、画廊を訪れていなかったら開催は難しかったと思うと、不思議なご縁を感じました。

平澤展では、隣接する小学校2年生以上の400名を超える子どもたちに鑑賞授業を実施することができました。会期中、千葉県教育研究会造形部会の発表会があり、5年生の授業が公開され、県内60名余の先生が視察されました。アートコミュニケータの皆さんのご協力により、絵画を鑑賞する素晴らしさを子どもたちに伝えることができたのではないかと思います。

鑑賞授業

平澤先生の奥様で、ソプラノ歌手の新藤昌子様には、様々なイベントにご協力いただきました。当館8周年記念 森のコンサート、クリスマスミニコンサート、小学校での歌唱指導をしていただきました。声量豊かな歌声とピアノやチェロ、トランペットの音色が平澤先生の作品とともに館内を包み込み、大変素晴らしい時間となりました。小学校では各国の国歌を披露され、子どもたちの心に深く残るひとときとなりました。

新藤昌子さん

展示した作品は、初期のモノクロ作品、舞踏会を思わせる絢爛豪華な作品、白日会出品作など平澤先生の画家人生をたどる展示をすることができました。平澤先生をよくご存じの方も初期の作品は初めて見たとおっしゃる方もあり、画家 平澤篤をより深く知る機会になったのではないかと思います。これからも長く残ってほしい作品です。

『夜と霧』
『Lunacy Night』

『Alla Veneziana』

2024年9月1日日曜日

【館長ブログ】アートの卵展 目標になった 展覧会

 8月1日から25日まで、市内中学校8校の美術部の展覧会が開催されました。生徒、卒業生、先生の作品82点が集まりました。本年が3回目でありましたが、会を重ねる度に内面を表現するような作品が多くなったように感じます。出品した本人に尋ねると「夕暮れの世界を縦軸横軸で時間と空間を表現しました」とのこと 。また、龍の作品では「鱗の一枚一枚に悩みが込められています」とのことでした。作品と対峙し、しっかり描き込む姿勢が感じられ、驚きました。油彩画の作品も多く、30号40号の大作も出品されました。来館された父兄の方もその大きさに驚かれていました。中には「購入したい」と言うお話もありました。とてもおしゃれでセンスもよく、お店に飾りたいと言うことでした

     

①「マジックアワー」 

②「がおー」

②「がおー」


③しゅわしゅわ           


本年度も、アートの卵賞、奨励賞2作品、森の美術館賞の4点を表彰しました。受賞作の中には、中学生の作品とは思えないタッチの個性的な作品もあり、今後の成長にエールを送る事ができたのではないかと思います。生徒さんからは「アートの卵展が活動の目標になっています」と言う声があがり、今後も必要な展覧会ではないかと思いました。残念ながら、造形部会主催での開催は今回で最後と言う事ですが、継続して開催してほしいと思いました。

アートの卵賞 「PeterSt.Paul Church


奨励賞「バンブーPOPストリート」


奨励賞「私が緑であること」



森の美術館賞 LOOK AT ME


2024年7月17日水曜日

【館長ブログ】馬場 洋展 子どもたちの感想に驚く

 45日~630日の3か月間は二紀会準会員の馬場洋先生の展覧会を開催しました。先生の作品は14年程前に初めて拝見し、それ以来ずっと作品を見てきました。

ある日、先生からお手紙がきました。自らの作品を「ある意味独り言のようだ」「モチーフや構図が難解である」という内容でした。展覧会をご覧になられたお客様の中にも、「画力は素晴らしいが難しいですね」というお話もありました。しかし、作家の心に映る風景を作品にするところに、先生の魅力があるのではないかと思います。

 

会期中、美術館のお隣が小学校ということで、2年生以上の児童を対象に鑑賞授業を行い、478名の子どもが来館しました。その前に、鑑賞授業をより充実させるために、アートコミュニケータの指導で、小学校の先生を対象とした研修会を実施しました。

 研修の結果、子どもたちの素直な感想がもっと引き出せるようになり、その感想には何度も驚かされました。二紀会に出品した「揺れる蒼い夢」という作品を見て、小学5年生の男の子から「過去と現代の時間の間(はざま)を感じました」という感想が。また、作品からストーリーを創る子どももいました。もしかしたら、馬場先生の内心を描いた作品には、子どもたちの想像の世界を拡げる力があったのかもしれません。子どものときの作品との出会いは、のちの人生に何か影響を与えるのではないかと思います。

 

「揺れる蒼い夢」2009年

中学生を対象としたギャラリートークでも、たくさんの質問や先生を囲んでのお話しをしている光景が見られ、とても嬉しく感じました。

 

馬場先生のお人柄と、一筆一筆が人生の痕跡であると考えひたすら画面に向き合う姿勢は多くの方々に感銘を与えました。週末ごとに来館され、絵画や絵に取り組む考えについていろいろお話できたことはこの上ない時間となりました。

馬場先生の作品はこれからも見つづけ、応援していきたいと思います。

「微睡みの幻-Ⅰ-」2014年